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アクネ菌
- 2012年5月23日 20:23
皆さんは、アクネ菌って聞くと
あ~ ニキビを作る悪さをするバイ菌
って思われますよね
TVのコマーシャルで、しきりにアクネ菌が悪いって
連呼されると、誰もが思ってしまいます
Drの中でも結構、そう思っている人がいます
ところが、アクネ菌は、皮膚の常在菌で
誰にでもいる菌なんです
悪さをするどころか、普段は肌をきちんと
機能させるための皮脂膜を作るために
ちゃーんと働いています
むしろ、みなさんの肌にとって役に立つ菌です
じゃあ、何でニキビの時に関係ないの??
ってことになりますが・・・・
炎症を起こし、肌のバランスが悪くなると
ニキビ菌は暴走し、ニキビを化膿させ
赤ニキビを作ります
菌のバランスが壊れることで、免疫がおかしくなって
しまうのです
これは、腸内細菌でも言えます
たくさんの菌がいて、それぞれが助け合ったり
牽制し合ったりして、成り立っているのです
皮膚の免疫と常在菌の文献を紹介しておきます
常在細菌と皮膚の自然免疫防御システム
Microbial Symbiosis with the Innate Immune Defense System of the Skin
Gallo RL, Nakatsuji T.
J Invest Dermatol. 2011 Jun 23. doi:10. 1038/jid. 2011. 182. [Epub ahead of print]
皮膚は感染に対して様々な保護メカニズムを持つ。自然免疫系への主要な寄与因子は抗菌ペプチド(AMP)であり、これは体内に侵入する病原体に対するファーストラインでの防御である。しかし最近の研究から、ヒト起源以外の皮膚の自然免疫系が明らかになってきた。本レビューでは、自然免疫系の重要性および健康な皮膚を保つ上での正常な皮膚細菌叢との関係に関する最近の研究結果を報告する。
ヒト皮膚でのAMP産生源は主にケラチノサイト、マスト細胞、好中球および脂腺細胞である。最近、ケラチノサイトに構成的に発現しているヒトβディフェンシン(hBD)-1の還元型が強力なAMPであること、感染、炎症、受傷によりケラチノサイトにおけるhBD-2、hBD-3、ヒトカテリシジンの発現が上昇することが明らかになった。またケラチノサイトが産生するリボヌクレアーゼ(RNase)5および7は、RNase活性とは無関係のメカニズムで抗菌活性を示す。培養ヒト脂腺細胞ではカテリシジン、hBD-2、および抗菌性ヒストンH4などのAMPの発現レベルがグラム陽性菌存在下で上昇する。皮脂の主要成分である遊離脂肪酸(FFA)も抗菌バリアとして働き、これらFFAはPropionibacterium acnes(アクネ菌)やStaphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)などヒト皮膚の常在細菌叢から分泌されるリパーゼにより産生される。エクリン腺も表皮表面へのAMPの重要な供給源である。
驚くべきことに、ヒト表皮の常在細菌もAMPを産生することが明らかになってきている。Lactococcus(乳酸球菌)、Streptococcus(連鎖球菌)、Streptomyces(ストレプトミセス)などの多くのグラム陽性菌は他の細菌の増殖を阻害する因子を産生する。皮膚の常在細菌である表皮ブドウ球菌はエピデルミン、Pep5、エピランシンK7 など様々なバクテリオシンを産生する。著者の研究グループは表皮ブドウ球菌により産生されるフェノール可溶性モデュリン(PSM)γおよびPSMδが宿主にとって有益であり、正常皮膚表面にAMPを供給することを示した。また最近、鼻腔に表皮ブドウ球菌が存在する人は黄色ブドウ球菌の鼻腔内コロニー形成率が著しく低く、これは表皮ブドウ球菌の分泌するセリンプロテアーゼによる黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成阻害効果によることが明らかになった。
また、腸の常在細菌が産生する共生因子が宿主免疫系の調節に有益に働き、自己免疫疾患や感染による炎症のリスクを低減することもわかっている。こうした因子には、Bacteroides fragilis (バクテロイデス・フラジリス)の産生するポリサッカライドA 、腸内細菌による食物繊維の発酵により産生される短鎖脂肪酸などがある。受傷した皮膚では表皮ブドウ球菌の産生するリポタイコ酸が、ケラチノサイトからの炎症性サイトカイン放出およびTLR2依存性メカニズムによる炎症を抑制する。一方で、ヒト皮膚モデルでは表皮ブドウ球菌がAMPの発現を抑制するという報告もある。皮膚のホメオスタシスは自然免疫応答の回避と刺激の均衡により保たれている。
細菌叢の不均衡により生じる非感染性の皮膚疾患には、尋常性座瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬、酒さなどがある。最近、これらの病因に皮膚でのAMP産生の変化が関与していることが示されている。
結論として、皮膚の自然免疫系が皮膚の細菌叢とともに病原菌のコロニー形成および日和見菌の過剰増殖に対するバリアとして働くことが明らかになってきた。通常は様々な皮膚感染症に対して抗生物質が使用されるが、その非特異的な殺菌作用は、細菌叢により保たれているホメオスタシスに影響を与える可能性がある。健康な皮膚を保つには、正常細菌叢の回復と維持が重要である。さらに、細菌の産生するAMPを病原菌特異的な安全な抗菌薬として皮膚感染症の治療に応用できる可能性もある。
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